【書評】花咲家の人々/村山早紀/徳間文庫ーー植物と会話ができる一家のお話

花咲家の人々の書影書評
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ーーじゃあ、話しかけてみましょうか。この街のどこかで、ラジオを聴いているお花の皆さん。さあ、ちょっと咲いてみましょうか?わたしの声が聞こえますか?

 今回ご紹介させていただく作品は、村山早紀・著の『花咲家の人々』です。”花咲家”シリーズの第一作目にあたります。書影がとてもかわいい♡ このシリーズはその後『花咲家の休日』『花咲家の怪』『花咲家の旅』と続くのですが、それは後々。。

 村山早紀さんは、私のとても大好きな作家さんなのです。長年に渡り児童文学を手がけられてきた、というもあるのでしょうか。文章は全体的にやわらかくて、情景描写や心理描写もすごく繊細で、読んでいてとても安心します。
 やっぱり読書をしていて、その場面を想像するのって楽しいですし、それをスムーズに手助けしてくれる作家さんたちには惚れ惚れしてしまいます。村山早紀さんは、自分の子供に読ませたい作家さんナンバーワンと言っても過言ではありません。安心と信頼の村山早紀さんなのです。

 この『花咲家の人々』も、作中どこを切り取っても温かいお話。もちろん登場人物それぞれの葛藤や悩みはあるけれど。でも最後にはそのすべてを凌駕していくような、胸いっぱいのジーンとウルウルが待っているのです。

 舞台は風早の街で戦前から続く老舗のお花屋さんの「千草苑せんそうえん」。村山早紀さんを知っている方はこの「風早」にピンとくる方も多いかと思います。村山早紀さんの数多くの作品で登場するこの風早。由来は、村山早紀さんが通学されていた、千葉県柏市にある風早南部小学校だそうです(豆知識)。
 え?話がそれてる?そうそう、千草苑もその風早の街並を彩る一員。お花屋さんの中にカフェが入っていたり。想像するだけで素敵な画が浮かんできます♡
 で、そこを経営する花咲家には代々、とある不思議な力が備わっています。”魔法”だの”生きる都市伝説”だの言われている特殊能力、知ってる人は知っている!
 本書によれば「花咲家の血を引くものが願うとき、草や花たちは、普段は封印されている、不思議な力を使うことが出来る。緑たちは、ひとや生き物の命を支え、守ることを喜ぶ。(引用)」だそうです。植物の声を聴けたりもするのです。え、ガーデニングとかぜったい楽しい!
 剣と魔法の世界ではなくて、現実っぽい世界でのこの設定なので、ロー・ファンタジーということになりますね。私の大好きなジャンルです。

 物語の主人公は花咲家の長女・茉莉亜、次女・りら子、長男で末っ子の桂の3人です。それぞれ性格の異なる彼女たち。生まれもった魔法の力の受け止め方・考え方もそもそも違います。
 根っこは人間なので、もちろん後悔もあれば悩みや不安だってある。でも、そんな魔法が使えるのだから、きっとやらなければいけないことが、あるのかもしれない。。
 生きることと死ぬこと、自分や誰かのために、強く願うこと、誰かを受け入れて、心を許すこと。そういったテーマをちょっとしたファンタジーを交えて描きっているこちらの作品。大人が読んでももちろんいいけど、小学校高学年くらいになった子供にも読ませたい(願望)。それだけ、読む年代を選ばないなという印象を受けました。村山早紀さんの手腕の賜物ですね。
 場面転換も工夫されていて、スリル感とはまた別の楽しさのある作品です。どんな人でも温かく安心して読める作品として、今回はこちらの作品をご紹介させていただきました。それでは、お読みいただき、ありがとうございました⭐︎

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