ーー不思議の国の住人たちが、殺されていく
ーーレッドキングには誰も絶対に勝てない
今回ご紹介させていただく作品は、小林泰三・著『アリス殺し』になります。”メルヘン殺しシリーズ”と呼ばれるものの第一作目です。タイトルからしてなんだか異様ですよね。。
本作『アリス殺し』の後は、『クララ殺し』→『ドロシイ殺し』→『ティンカー・ベル殺し』といった続編が連なりますが、、小林泰三さんは残念ながら2020年に亡くなられてしまわれたため、、さらなる続編は難しそうです。。
まず、作品タイトルにもある「アリス」ですが、ご想像の通り、ルイス・キャロル氏の原作小説『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の少女アリスその人です。私は原作小説は読んだことがないのですが、ディズニーのほうでとても馴染み深く、ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演の映画『Alice in Wonderland』は映画館で観ました♪
こちらの作品は、そんな私の知る限りの『不思議の国のアリス』の世界観をとても忠実に再現しているように感じました。
アリスをはじめ蜥蜴のビル、眠り鼠、三月兎、マッドハッター、白兎、ハンプティ・ダンプティ、メアリーメイ等々のお馴染みのキャラクター達が名を連ね、お馴染みの”バカげたお茶会”や”堂々巡りの会話”が繰り広げられるのです。もうね、これだよこれ! って思いながら読んでいた私。
『不思議の国のアリス』をあまり知らない人だと「なんなのこれ?」って感じられるかもしれませんが、こういうものとして読んでいくうちに、だんだんと癖になってくるかもしれませんので、初めはどうか我慢して読み進めてみてください。。
”悪夢×メルヘン×ミステリ”と謳っている通り、不思議の国の住人たちが物語の中でどんどん殺されていきます。私、誰かが殺されるみたいな作品ってあまり好きではないんですよね……。エッ
でも今回は、不思議の国でのおちゃらけ感とのバランスもあって、なんとか読み終えることができました。
物語のヒロインは栗栖川亜理。バリバリの理系大学院生です。彼女は次第に”不思議の国の世界”と彼女らの暮らす”地球”という相反する世界それぞれで起こる怪事件に巻き込まれていきます。
そして、彼女の同期生や研究員、教授などもまたどんどんその渦に飲み込まれていくのです。
もはや理系大学院の頭脳が挑む、不思議の国で起こる殺人事件の原因究明という構図です。
私はけっこうファンタジーとして楽しんでいた部分があるんですけどね笑 設定からして仕方のないことではあるのですが。
でも読み進めてみると叙述トリックとかミステリならではの見せ場もところどころに散りばめられていて、結末なんかはハッとするものでした。これぞどんでん返し! ってやつです。
私はあまりミステリ作品には詳しくはないのですが、どんでん返しにハマる人の気持ちがちょっとわかった気がします(*´艸`)
最後になりますが、この作品のちょっとした特徴についても書いていきたいと思います。
それは、なんと言っても会話文がめちゃくちゃ多いこと。何かの脚本かなと思うくらいには多いです笑 見開きでずーっと会話なんてこともありました。私の印象だと、 会話文:地の文=7:3 くらいですかねー。えーって思いますよね。
でも、登場人物の会話の中に潜む推理やニュアンス、キーワードを拾いながら読者として追っていくうちに、ある種の臨場感のようなものが湧いてきたのはたしかです。。
もちろん会話文には堂々巡りの会話も含まれますので悪しからず笑
ただ、堂々巡りの会話とシリアスな会話部分との緩急が、独自のリーダビリティを生み出しているようにも感じました。創作論としても、けっこう興味深い内容だと私は思いました。
ではでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございましたー♪
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