【書評】線は、僕を描く/砥上裕將/講談社文庫ーー命の輝きを、心の宇宙に重ねて

書評
※書影は版元ドットコム様より
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ーー描くことは、こんなにも命といっしょにいることなのだ。

 今回ご紹介させていただく作品は砥上裕將とがみひろまさ・著『線は、僕を描く』になります。Twitterのフォロワーさんとの「読書会」企画で選ばせていただきました。

 こちら”第59回メフィスト賞”、”2020年本屋大賞3位”に輝いた作品。
 本屋さんでちらほらと目にはしていたのですが、テーマとしているのはなんと「水墨画」。なんとなく自分には敷居が高そうで、手に取るまでには至れずにいました。
 でも気になってはいたので、フォロワーさんが「読もうと思ってる」と言ってくれて、ならば! と早速一緒に読み始めることに。!

 私が買ったときには表紙に表紙と同じくらいの広さの帯が付いていて、そこにはなんと横浜流星くんの姿が……。実はこの作品、2022年10月21日に横浜流星くん主演での映画公開も予定されているのです。
 横浜流星くんと言えば、2022年5月より公開された映画『流浪の月』でも相当なクズ男を熱演していました笑 『線は、僕を描く』ではどちらかと言えば優男方面のキャラクターを演じることになるとは思うのですが、小説を読む限りでは、世界観や設定からして難しい人柄だと思うので、どのように演じてくれるのかなーと今から期待大です。

 主人公の青山霜介あおやまそうすけは、高校時代でのとある出来事を機に心に深い傷を負ってしまいます。心もどこか空虚なままに大学生活を送っている最中、バイト先で偶然目にした薔薇の水墨画。その作品はヒロイン・篠田千瑛しのだちあきによって描かれたものでした。

 ところで作中には、水墨画における栄誉ある賞の一つとして「湖山賞」というものが存在します。この湖山賞、千瑛の祖父である篠田湖山という水墨画界の神様のような人が主催するものでして、霜介と千瑛の2人はややあって、次の年に開催される湖山賞で対決をすることとなるのです。。この作品は、絵師としての2人の葛藤と飛躍の物語でもあります。

 みなさんは水墨画について、どのような印象をおもちですか? 私は歴史や伝統文化にはとても疎いので、、雪舟や宮本武蔵が嗜んでいた、墨と水を使用して描いた絵くらいの認識しかありませんでした。。絵も日本史の教科書でちょっと見たことがあるかなくらい笑
 素人だった霜介もはじめはきっとそれくらいの感じだったんじゃないかな……?←私と一緒にするな! 

 この物語には、霜介と千瑛以外にも何人かの絵師が登場します。中には上述の篠田湖山先生のような神クラスの人からその内弟子の人たち(←こちらも先生クラスの達人だったり)とかとか。
 霜介はやっぱり素人なのだけれど、心の深い傷に由来するある特質が水墨画を学ぶ上でのアドバンテージにもなっていたように思います。

 水墨画の道場という場で達人たちに囲まれながら、そして達人たちが描く姿や言葉を感じ取りながら、自身の絵師としての道を探究し葛藤していく姿がとても美しく描かれていて、、
 その中で、霜介が私たちと同じ目線で水墨画の世界を感じてくれているため、没入感も半端ないのです。
 一文一文、繊細に描かれる状況の描写、心理描写に包まれながらまるで目の前で水墨が展開されているかのような感覚に陥りました。
 たびたび垣間見れる達人の領域に、どちらかというと「なんかわからないけど、凄いのはわかる!」みたいな謎感覚も多かった気がしますが笑
 というのも、達人たちの発する言葉一つ一つが格言級! 短い声がけの中に埋め込まれたその道の真髄のような言葉は、その意味を考える間も無く次々に展開され、情報量の多さに頭が追いつかないこともしばしば。。

 「花に教えを請いなさい」

 はじめ見たときはうーん……って感じでした。。でも今では私なりの言葉で答えのようなものは伝えられる気がします。ここでは話しませんけどね。

 主人公・青山霜介とヒロイン・篠田千瑛と書きましたが、この2人の関係の変化も気になるところですよね。
 私はとても意外で斬新だな、と感じました。こういう描かれ方だからこそ、この作品をより崇高なものへと誘う結果になったのではないかなと思うのです。。ウンウン

 繊細に紡がれる霜介と千瑛の心の行末。水墨画を通しての達人たち生き様。深淵なる世界が、ここにあります。。

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