【書評】花屋「ゆめゆめ」で不思議な花束を/編乃肌/マイナビ出版ファン文庫

ゆめゆめ1書評
※書影は版元ドットコム様より
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ーーそれだけじゃないのよ? 素敵なお花に囲まれている、夢のような空間という意味も込めてみたの。そこに私たちの、花屋をやりたいっていう長年の夢も上乗せして、「ゆめゆめ」

 みなさんは一年の中で、どれだけお花を買われますか?
 私は生花だと、いずれは枯れてしまうというのがなんとなく悲しくてあまり自分では買いません。←広い庭があれば、いろんなお花を育ててみたいというのはあるんですけど、、
 インテリアとして飾るのもドライフラワーやプリザーブドフラワーなどの雑貨がほとんど。。
 とはいえ、いざ大切な日に人から贈ってもらえたりするとやっぱり嬉しいもの。そんな日にはウキウキ気分で、飾る場所を模索しているうちに一日が終わってしまうことも笑

 お花屋さんの繁忙期は3〜5月頃だそうです。3月4月は物事の終わりと始まりのつなぎ目の月ですし、お彼岸やホワイトデーがあったり、5月には母の日もありますからね。
 繁忙期に限らず、3月3日(上巳の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕の節句)、9月9日(重陽の節句)などの年間の節目には、それぞれ桃、菖蒲しょうぶ桔梗ききょう、菊のようにゆかりの花も存在したり、もちろん結婚式や記念日などにも、贈り物としてお花は選ばれます。

 一年を通して、行事・節目や記念日などに、人々は花に自身の愛や感謝、幸福を願う気持ちなどを託そうとします。お花屋さんはそんなときに人と花との間を受け持つ、花のスペシャリストとして存在してくれているのです。

 本作、編乃肌・著『花屋「ゆめゆめ」で不思議な花束を』では、そんなお花屋さんで働くこととなってしまった大学生の木尾蕾きおつぼみが主人公をつとめあげます。

 蕾は高校生の頃、自転車通学をしている最中、突然自転車のチェーンが壊れ、通りぎわのお花屋さん「ゆめゆめ」の店頭にディスプレイされていた花たちに盛大に頭から突っ込んでしまいます。ナントッ
 自身を顧みずに、散らばった花たちに謝りつづける彼女を心配して声をかけたのは、「ゆめゆめ」の店長の息子・フローラル王子こと夢路咲人ゆめじさくとなる美青年なのでした。。

 蕾はその事件以来、「他人の身体に咲く花が見える」という特殊能力に目覚めます。その花はその人にとって最も思い入れのある花だそう。
 大学生になった蕾は、なんやかんやあって、その能力を携えつつ「ゆめゆめ」で働くことになるのです。

 日常ではあんまり万能とは言えないというか、たぶん私、お父さんの頭に赤い薔薇が咲いていたりしたら吹き出します笑 お花屋さんとしてはとても有用で素敵な能力なのは確かですけどね。
 そんな能力を身につけてしまった蕾は、いったいどんな風にお客さんと向き合っていくのかな。。

 この”ゆめゆめシリーズ”第一作目では、蕾が「ゆめゆめ」に勤め始めてからおおよそ1年間の物語が綴られます。
(あ、言ってませんでした! このシリーズはこの後も、二作目『花屋「ゆめゆめ」で花香る思い出を』→三作目『花屋「ゆめゆめ」であなたに咲く花を』と続くのです)
 プロローグとエピローグを除けば全13章からなるこの作品。各章それぞれでモチーフとなる花を交えたエピソードが綴られる形となっております。
 サクラソウ、カスミソウ、ゴデチア、ガーベラなどなど……私が一番ほっこりしたのはやっぱりアガパンサス(花言葉:恋の訪れ、愛の訪れ)のお話でした。。♡

 「ゆめゆめ」というのは、もともとは夢路家による家族経営のお店です。夢路家は父:葉介、母:香織、長男:咲人の3人家族。
 そこに突如として加入を遂げた蕾。夢路家には「ゆめゆめ」を作り上げる上で掲げた夢と理念があって、蕾がそれに応えようと尽力する中で、次第に両者との深い信頼関係が生まれていきます。

 少し心が疲れたときに、ぜひぜひこの作品を手にとってみてください。やっぱりお花って、ときとして人の心を映し出すものだから、、近くに感じているときっと優しい気持ちになれると思うんです。
 この物語は、そんな花のもつ優しさに各章彩られた温かい作品として、ちょっぴりミステリ要素も混じったエンタメ作品として、あなたをきっと満足感の元へ誘ってくれるはずです。。

 あと、お花屋さんを舞台とするお話として、山本幸久・著『花屋さんが言うことには』もとてもおすすめなのでこちらもよろしければ↓

【書評】花屋さんが言うことには/山本幸久/ポプラ社ーー人と花とをつなぐ、お花屋さんの物語
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