【書評】サクラ咲く/辻村深月/光文社文庫ーー鮮麗な青春の栄光を、勝ち取るための物語

サクラ咲く書評
※書影は版元ドットコム様より
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ーーずっと忘れない。私たちの遠い日の歌を。

 こんにちは。Twitterの友達の影響で、最近は青春小説を読むことが多くなった私です。そんな私のもとに、桜の花びらの如く舞い降りてきましたこちらの作品、辻村深月・著『サクラ咲く』。
 辻村深月さんの描く青春は、「厳しい逆境からの解放・鮮麗な光への道標」を示すものが多く、読者をだんだんと高揚感の淵へと誘っていくその作風は、晴々しい読後感をもたらしてくれます。

 ところで私、中学時代は何やってたかな、、? 読書して、授業受けて、部活やって、塾行って、読書して、、部活の先輩に恋をしたけれど、同じ部活の女の先輩と付き合いだしたため見事に失恋。。
 たぶんその頃からかな、「蛙化現象」という、今思えばよくわからない心理状態にも陥りました。
 「蛙化現象」っていうのは、すごく端的に言うと「好きになった人が自分のことを好きになると、その人に嫌悪感を抱くようになる」みたいな……? もうね、ホントに「えっ!?」って感じですよね。ごめんなさい。でも、その頃はそのことでけっこう悩んでいたんです。。

 今思えば些細なことだったり、思いつきもしないことだったりすることも、中学生の私は一つ一つの出来事に大きく心揺るがされたり。たぶん周りの子も同じように、大きな感情を表に出すこと多々だったのでしょうね。
 青春に見るこのような感情は(蛙化現象は置いといて笑)、描き方によっては、今の中高生だけでなく、大人になった自分たちにも心奮い立つものを感じさせてくれるように、私は思うのです。

 辻村深月さんの青春作品はまさにそれです!

 『サクラ咲く』は他作品と比べると割とソフトな仕上がりではあるものの、たしかな辻村節を垣間見ることのできる作品だと思います。
 『約束の場所、約束の時間』『サクラ咲く(表題作)』『世界で一番美しい宝石』の三編からなり、それぞれが独立した章立てのようで、ほのかな繋がりを持つような構成になっています。
 この作品を読んでいて嬉しかったのが、『サクラ咲く(表題作)』の主人公の子と『世界で一番美しい宝石』のヒロインの子が読書好きなところ。
 私も教室や図書室で一人で読書している時間が好きだったクチなので、とても親近感が湧きました⭐︎

 (今心の中で「ぼっちじゃん笑」とささやいたあなた! その通りです。!泣)

 2人ともそれぞれの事情で孤立感というか孤独感というか、、暗い気持ちを抱きながら送る学校生活。
 『サクラ咲く(表題作)』は、主人公が図書室でのある出来事を通して、自分の心とも呼べるものと対話をし、少しずつなにかを掴み取っていく友情と成長の物語、そしてほのかな恋愛の物語。
 『世界で一番美しい宝石』は、主人公が仲間たちと一緒に”図書室の君”なる二つ名をもつヒロインとの夢を切り拓いていく物語です。
 簡単には書きましたが、どちらも青春の高波に飲み込まれるような、とても清々しい気持ちになりましたし、最後にはグワーッときましたよ! グワーッと! まさに辻村節です。
 そしてそれらが最初の小品『約束の場所、約束の時間』に繋がっていくという構成が、ああ、素敵です。。

 大人になった私たちも、かつては青春真っ只中にいました。そのときに抱いた憤りや暗澹とした強い感情は、夢や希望は、今どこにありますか? 消え去ってしまいましたか? いいえ、まだ私たちの心の奥底に眠っているやもしれません。
 私がかつて抱いた夢も、変遷を遂げながらも、ひとつの種として、今の自分を根づかせているのやもしれません。
 青春の強さを、ぜひともこの作品から感じ取ってみてください⭐︎

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