【書評】木曜日にはココアを/青山美智子/宝島社文庫ーー世界をめぐるほっこりラブストーリー

木曜日にはココアを書評
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ーー好きな場所にいるだけで、元気になることもある。ある人が、そう教えてくれました

 今回ご紹介させていただく作品は、青山美智子・著『木曜日にはココアを』になります。青山美智子さんのデビュー作で、”第1回宮崎本大賞”の受賞作です。
 ところでみなさんには、お気に入りのお店はありますか? 思い浮かべてみてください。服を買うなら結局ここかなとか、髪の毛を整えるならこの美容院以外ないなとか。ひとりでゆったりとした時間を過ごしたいときにはやっぱりここのカフェだよなーとか。どうでしたか? え、ないっ?!
 行き当たりばったりで入ってみるのもたまには良いけれど、内気な私はやっぱり、慣れ親しんだお店に入るのが正解なのです。空間そのものが自分を受け入れてくれている安心感、小さな願いを叶えてくれる満足感。
 ちなみに、とてもローカルな情報にはなるのですが、仙台の晩翠通りにある「cafe えにしえ」というお店が私のイチオシです。店員さんも温かくて、ご飯ものもとても丁寧に作られていて、大好きなハーブティーもおいてあるし、季節のスイーツなんかもあったりして。仙台の街中にある私のくつろぎ空間なのです、良き。。

cafe enisie(カフェえにしえ)
古inisieの縁enishiありて出会う場所 仙台の美しい四季を愉しむカフェ

 この作品は川沿いの桜並木の中に佇む「マーブル・カフェ」というお店を起点に、全12編、リレー形式に12人の主人公の視点で展開されていきます。12人はカフェの店員さんだったり、常連客だったり、はたまたカフェとは直接関係のない世界のどこかにいたり。年齢も性別もまったく別で、しかも時代を飛び越えて視点が移っていったりもします。
 面白いですよ、読んでいて、次はどんな人のどんな人生の一端に触れることができるのかなというスリル感もあって。普段なんなしにすれ違う人たちにも、目の前にいるカップルにも、屋台のおじさんにも、私なんかでは想像もしえない物語が隠されているのだと思います。フィクションではあるけれど、それらを想像し得るものとして描いてくれている、そんな作品に感謝です。

 主人公たちには、それぞれ抱えているものがあります。恋の悩み、仕事の悩み、人生の悩み、人生への感慨など。主人公の周りの人たちだってきっと同じです。ひとつ空の下で、それぞれの人たちにそれぞれの人生があって、強い思いがあって、やるせない気持ちがあって。自分ひとりでは解決できないこともあるかもしれない。でも、みんな同じだから、周りの人たちとの関わりの中で気づけることがあるかもしれない。。
 世界中をめぐって、視点は切り替わっていくけれど、”誰もがどこかでつながっている。あなたは一人じゃない”というメッセージが、私の心には強く、伝わってきました。
 そして、思いがけないクライマックスと結末に、最後のほうでは私、もうなんか、泣きながら微笑んでいました笑 ダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』くらい、気持ちがグワーッってこみ上げてきました。「〜を」で終わる作品にハズレはありません。他にも「〜を」作品探してみます!← みなさんも、おすすめがあればぜひ教えてくださいね。

 話は変な方向へいってしまいましたが。。この作品、たぶん昔、Web小説で読んだことがある気がするのです。そのときはショートショートで、ずいぶんと雰囲気も違っていましたが、温かいお話に心が洗われていたのは確かです。
 そして今、それが一冊の本となって手元にあるのはなんとなく嬉しい。時空を超えて、ほっこりを教えてくれた素敵な作品なのでした。ではでは⭐︎ 

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