ーーさく梅は風にはかなく散るとても にほひは君が袖にうつして
さてさて始まりました! 歴史のお勉強です!……今回ご紹介させていただく作品は、”第150回直木賞”の受賞作でもある、朝井まかて・著『恋歌』になります。この作品の主人公は、樋口一葉の和歌の師匠である中島歌子。幕末の水戸藩を主な舞台に、とても勇しく、儚くて切ない愛の物語(彼女の半生)が綴られていきます。
幕末といえばやっぱり、坂本龍馬とか新撰組とか、、あとは西郷隆盛とか吉田松陰などの薩摩藩や長州藩の方々のお名前が頭に浮かぶと思うのです。←偏見かな? 水戸藩といったら、、かろうじて「桜田門外の変」と新撰組初代局長の芹沢鴨くらいかなあ、なんとなく知っていたのは。。(歴史音痴でごめんなさい泣)
ひとやむなしく(1867年)大政奉還……政権が幕府から朝廷へと返還された後、政治の主導権を握ったのはやはり薩長の人たちなのですが……私はてっきり、水戸藩は徳川御三家だから、幕府の権力が失われたと同時に、政界の陰に追いやられたのだとばかり思っておりました。あながち間違いではないけれど、この本を読んでみて、そんなに簡単なことではないことがわかりました。。
水戸藩の中にも、薩長と同じく尊王攘夷を掲げ行動していた人たちがいましてですね。これが”天狗党(改革派)”と呼ばれた党派なのです。「桜田門外の変」の発端は、大老・井伊直弼によって行われた、尊王攘夷派弾圧体制である”安政の大獄”。それに痺れを切らした天狗党の人たちが起こした事件がそれになります(間違ってたらごめんなさい)。。水戸藩には天狗党と対立する”諸生党(保守派)”という党派もありました。幕末時点で、水戸藩の藩政は2つに割れてしまっていたのです。これが後の日本のトップ層に、水戸藩が人材を輩出できなかった原因の一つとなります。
江戸の池田屋という宿屋の娘、若き日の中島歌子(当時の名は登世)が恋をしたのは、その天狗党に所属する以徳という若武者でした。「水戸の三ぽい(怒りっぽい 理屈っぽい 荒っぽい)」にもまるで当てはまらないような聡明な風体。登世のじゃじゃ馬な感じと初々しい恋心が、読んでいてとてもキュンでした笑 でも当然登世は、好きになった人が天狗党だってことも知らなければ、そもそも天狗党が何で、水戸藩がどうとかも知らないわけで、ただただ純粋に恋をしていただけなのです。カワイイ
この恋の行方は、いったいどうなってしまうのでしょう……。
激動の時代に、水戸藩内で起こった壮絶な出来事の中で、2人はそれぞれ、命懸けの愛を貫きます。以徳は天狗党の一員として、生きるために戦い、登世は命懸けで和歌を詠むのです。
何がどうしてそうなったのかは、ここでは書きません。歴女でもなんでもない私も、幕末の水戸藩の情勢なんて、この小説を読むまではほとんど何も知らなかった次第です。。歴史を知るという意味でも、この作品はとても良い作品なのだと思います。
後に登世は、名を中島歌子と改め、「萩の舎」という自身の歌塾を開塾します。そこには三宅花圃やその妹弟子の樋口一葉も所属し、女たちの賑わいが轟くような、賑やかかつ華やかな場となるのです。中島歌子は、そんな弟子たちと母と娘のような関係でもありたいと願いながら、やはり師弟関係であるという現実に咎められます。
そして私は、中島歌子が最期に残していった和歌を見たとき、江戸から明治を生き抜いた登世のすべてが、ここにあるのだと感じました。にゃあ、感動でした……。
あと、同じように和歌を取り扱った歴史恋愛小説としてこういう作品もあるので、よろしければ見てみてくださいね。ではでは、お読みいただきありがとうございました⭐︎

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