【書評】木もれ日を縫う/谷瑞恵/集英社文庫

木もれ日を縫う書評
※書影は版元ドットコム様より
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ーー面変わりしたんは山姥になったせいやんな

 今回は、谷瑞恵・著『木もれ日を縫う』をご紹介いたします。谷瑞恵さんについては以下の記事でも少し紹介をしているので読んでみてくださいね。

【書評】がらくた屋と月の夜話/谷瑞恵/幻冬舎文庫ーー人と物との、不思議で大切なめぐり合わせ
ーー月の明るい夜は、これらが語り出す。  今回ご紹介させていただく作品は、谷瑞恵・著『がらくた屋と月の夜話』になります。谷瑞恵さんと言えば、2000年代初めから実に多くのライトノベル作品を手掛けられている方でして。『思い出のとき修理します...

 この『木もれ日を縫う』という作品は、小説すばる2015年12月号〜2016年6月号にて連載された、谷瑞恵さん初の文芸誌連載作品だそうです。
 谷瑞恵さんといったら、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか? 私は『思い出のとき修理します』シリーズで谷瑞恵さんを知りましたので、現実味の強い世界観にちょこっとの不思議を散りばめた、心温まるストーリーを書かれる方だなあというイメージを持っています。

 『木もれ日を縫う』も読んでみるともちろん、そんなイメージを裏切らない作品ではあったのですが、私がこの本を手にとったのは、Twitterのフォロワーさんがツイートしていたのを見て、表紙のイラストが可愛かったからという不純な動機です笑 谷瑞恵さんの作品じゃなくてもたぶん買っていました←
 でも、本選びってやっぱりめぐり合わせな部分もあると思うのです。タイトルと表紙とあらすじと後、できたら最初の数ページくらいを読んでみて、読むかどうかをじっくり吟味することもあるでしょうし。あ、この本可愛い、買おっ! ってなることだってありますよね笑 中には本屋さんで目をつぶって、ふと手に触れたものを手に取られる人だっているかもしれません←いないかな?
 いろんなめぐり合わせで手にした本を読んでみるのも、今まであまり意識してこなかった作家さんを知ることができたり、、あ、この前私、たまたま手にとって並行して読み進めていた別作家さんの2冊の小説の中で、同じ日に「枯れ尾花」っていう単語が出てきて感動したのを憶えています!キラン 「枯れ尾花」なんてそうそう登場しない単語ですよ! たまたまのめぐり合わせでそういう偶然的な繋がりを見出せるのってすごく面白いです。あれ? 私だけ……?
 そう、『木もれ日を縫う』はまさに、”大切なめぐり合わせ・繋がり”をテーマとしたほっこりストーリーなのです!←無理矢理すぎない?

 舞台は東京。そこには歳の離れた三姉妹がバラバラに暮らしています。長女の絹代は港区に住む40代主婦、次女の麻弥は30代の男っぽい独身寮暮らし。三女の紬は千駄木に住む20代服飾メーカー勤めの会社員。3人とも全く別のキャラクターを持っています。その3人のもとに、鈴鹿の山中から東京へ出向いてきた、山姥を名のる母親のような人が突如としてアプローチを仕掛けてきます。
 そしてその山姥さん、パッチワークが好きみたいで、手作りの作品をいつも持ち歩いていたり、相手が欲しいとも欲しくないとも言わないうちにプレゼントしてきたりもします。謎です。
 この作品、とにかく「山姥」「パッチワーク」という単語がめっちゃくちゃ登場します。どう考えても溶け合わないその単語の裏側に隠された真相とは? 三姉妹やその周りの人たちを巻き込みながら展開されていくミステリ作品となっています。

 東京という舞台で、まあパッチワークはわかりますけど、山姥って笑 ここにも現れる非日常の日常感、谷瑞恵さんワールドですね。そして、愛に満ちた涙の展開はお約束です。私たちはきっと、どこかで繋がっているんですよね。
 あとやっぱり、パッチワーク面白そうだなって感じました。単なるつぎはぎではなくて、そこには布の色合いや形選びの段階でのセンスも必要だし、何千何万通りもある選択肢の中から作成時の思いを選び取っていく楽しさもあるし、いつかやってみたいなー。

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