ーー秋の葉は落ちるのではない。飛び立つのだ。飛躍できる一度きりのそのチャンスに、彼らは与えられた時間を精いっぱい使って空をさまよう。日の光を照り返して輝きながら、風の流れに乗ってくると舞い、滑り、翻る。
今回ご紹介させていただく作品は、ディーリア・オーエンズ著『ザリガニの鳴くところ』になります。2019年と2000年でアメリカで最も売れた小説なんですって。日本でも”2021年本屋大賞翻訳小説部門”を獲得されています。
でもアメリカ人と、日本人である私(しかも陰キャ)の感性には多少の隔たりもあるだろうし……って感じで、初めは少し疑り深く読み進めておりました。
されど! やっぱりアメリカです!ン? 人種とか関係なく、誰が読んでもこのスリル感には息を飲むことになるのでは、と感じてしまいました。
作品の特徴として、ミステリの枠組みの中に、大自然での成長物語やラブロマンス、そしてハートフルストーリーや更にはアメリカンドリームまで、いろんな要素のつまったものになっています。
例えるなら、、小説界の超豪華幕の内弁当ですね!
この物語は、ノースカロライナ州の湿地と、その更に奥地にある沼地という大自然を主な舞台としております。
そうそう、多くの水源と木々や草花に覆われ、玄関開けたら2秒でカモメに出くわしそうな場所です。
生まれた頃から日本にどっぷり浸かってしまっている私なんかだと到底知る術をもたないような、、でも私も生まれは田舎なので、周りに虫はたくさんいました。。あとは山とお城もありましたよ。。←
著者のディーリア・オーエンズさんは、ジョージア大学で動物学の理学士号を取得し、更にはカリフォルニア大学デービス校にて動物行動学専攻の博士号を取得されている学者さんだそうです。
そして、翻訳を担当された友廣純さんの力もあって、この小説、もうね、読む自然観察です。
動物の習性・振舞いや分布のようなマクロな視点から、鳥の羽や貝殻、きのこ、草花などの細部の特徴にまつわるミクロな視点まで、あくまでも小説という範疇の中でですけど、鮮明な描写を交えて自然に、素人にも感じ取りやすいように過不足のない記述が成されているのです。
さてさて、まさか自然観察だけでこの一冊が終わるはずもありません。自然観察は物語の中でのあくまでも一要素。
この物語では、1969年に”湿地”の中でとある人物の死体が発見される、という出来事からの一連の流れと、1950年代から1960年代にかけて、”湿地”で暮らす、家族に見捨てられた独りの少女(当初6歳)の成長の流れが、ほぼ交互の章区切りで展開されていきます。
関連性のあまりつかめない2つのストーリー、、もうこの時点でミステリ感が漂ってきますよね。
私、ミステリ作品って話題になっていそうなのはたまに読んだりはするのですが、それほど詳しくはないので、こういう魅せ方があるのかぁ! ってな感じでもう鳥肌が立ちましたよ。
中盤からはページをめくる手が止まらず残像がちらほらできていました←ちゃんと読めてるのかな?
主人公の少女、初めはちゃんと家族と暮らしていたのです。でも、お母さんが出て行ってしまい、年上の兄弟たちもみんな出て行ってしまい、最後にはお父さんも。。
自然の中に取り残された6歳の少女に、いったいどのような生きる術が残されているのでしょう。湿地でひとりぼっちで暮らしているというだけで、周りの人間からは”湿地の少女”などと揶揄され、蔑まされます。
味方がいない。お金もない。字も読めない・書けない。でも生きなきゃいけない。
決して少女は、諦めないのです。。!
さあ、舞台は整いました。ここから始まるアメリカ人が愛してやまない物語を、そして全私が泣いた感動の物語を、みなさんにもぜひとも味わっていただきたいです。
ではでは、お読みいただきありがとうございました⭐︎
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