【書評】図書館の魔女/高田大介/講談社文庫ーー言語と言葉による超推理ファンタジー

図書館の魔女の書影書評
※書影は版元ドットコム様より
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ーー剣でも、魔法でもない、少女は”言葉”で世界を拓く。

 今回は、私の個人的に大大大好きな作品⭐︎
 高田大介・著『図書館の魔女』のシリーズ第一作目をご紹介いたします。
 第一作目『図書館の魔女』の後は、二作目『図書館の魔女 烏の伝言』→三作目『図書館の魔女 霆ける塔』と続いていきます。
 第一作目は”第45回メフィスト賞”の受賞作。単行本は上・下巻合わせて1400ページにもなる超大作です(辞書かな?)。文庫本だと4冊に分かれていて、最後の4巻だけなぜだか600ページ越えです笑
 著者の高田大介さんは、長年にわたって言語学を専攻・研究しておられる言葉のスペシャリスト。そんな方が本気で小説を書いたらいったいどんなものになるのかっていうことなんですよ!←テンション高め

 物語の主要舞台は、一ノ谷という大国の王都にそびえ立つ”高い塔(図書館)”になります。
 史上最古の図書館である高い塔は、一ノ谷の中で、内政や外交戦略などの意思決定を司る国家の中枢機関としての役割をになっています。
 中枢機関としては他に”王宮”と”議会”が存在し、これら3つはお互いに牽制し合うような形で、いわば三権分立的な政治体制となっています。

 先代の、高い塔の魔法使い・タイキが退任したことで、その孫娘のマツリカが後継を担い、高い塔の魔女としてその猛威を振るうこととなるのですが……。
 彼女はまだ若いんですよねー。物語の中でも「うら若き少女」と称されるほどなので、私のイメージだと12、13歳くらいかなぁ。
 祖父のタイキに比べると、やっぱり周りからは少しだけなめられている節もあるのですが、そこに打ち勝っていく彼女の勇ましさも、この物語の魅せ所なのです。
 後もう一つ、彼女は物語の展開に大きく関わるほどのある特別な事情も抱えています。それは口がきけないということ。。

 図書館のメンバーには、マツリカの他に、司書のハルカゼやキリン、後はマツリカにとってのかなりのキーパーソンとなる、田舎の村から召喚されてきたキリヒトがいます。
 ハルカゼもキリンもキリヒトも、全員ワケアリなんですけど、笑 優秀なことには変わりありません。
 ハルカゼは諜報活動に長けていたり、キリンは軍師としての実力はさながら、マツリカの将棋の相手が務まるほどには頭脳明晰です。なによりも驚きなのがキリヒトで、、、この場では「反射神経がすごい」とだけ笑

 マツリカの強みは、他を寄せ付けない程の卓越した洞察力と推理力、探究心。
 力の源となるのは言語や言葉の知識。
 他者の言葉のニュアンス、ひとつひとつの言葉がどのように影響を及ぼすのか、書物や手紙に隠された言葉の動機や、それらとあらゆる事象との関連性を見抜く頭脳が、王宮や議会だけでなく、他国からも恐れられる所以となっています。

 この作品の注目すべき点の一つは、高田大介さんの文体だと思うのです。

 簡単にいいますと、超ヘヴィなライトノベル!←矛盾

 地の文が非常に多いというのと、漢字が多用されていることもあって、紙面が非常に黒々としています笑
 うーん、この物語は言語や言葉を鍵に推察に推察を重ねていく描写が中心となっているので仕方のないことなのです。。
 じっくり読むしかありません。やっぱり学者さんが書いているってだけあって、文章自体はとてもわかりやすいですしね。言ってしまえば、活字中毒者ファーストな代物です。。

 最後に、みなさんもお気づきかもしれませんが、マツリカは高い塔の”魔女”と呼称されるものの、魔法は一切使いません。
 物語全体を通しても魔法というか、登場するのはせいぜい催眠術くらい。図書館には魔術書なるものは存在しますけど、それもマツリカ自身でひと蹴りしているので笑
 マツリカが操るのは言葉の力。武力をほとんど持たない図書館が、いったいどのように世界を切り拓いていくのでしょうか。めちゃめちゃ壮絶で壮大なハイ・ファンタジー作品を、ぜひともご堪能あれ⭐︎

 あ、公式の特設サイトもご載せておきますね↓

高田大介『図書館の魔女』シリーズ特設サイト|講談社文庫
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