ーーもはや私は彼女の後ろ姿に関する世界的権威といわれる男だ。
今回ご紹介させていただく作品は、森見登美彦・著『夜は短し歩けよ乙女』です。私、森見登美彦さんの作品を読むのはこの作品が初めてでした。
まるで近代文学を彷彿とさせるような、そんな文体からなるぶっ飛んだ恋愛ファンタジー作品でした笑 日頃イメージしているような綺麗な恋愛ファンタジーとは一線を画す”ぶっ飛んだ”というところがポイントです!
調べてみますと森見登美彦さんは、この作品を含め『四畳半神話体系』『ペンギン・ハイウェイ』『有頂天家族』等数々の作品を映像化や舞台化へとつなげている方のようですね。
作品名は知っていてもどこか遠巻きに眺めていた自分。この『夜は短し歩けよ乙女』という作品に出会ったことで、またたく間に森見登美彦ワールドの魅力に取り憑かれたのでした。
こちらの作品は”第20回山本周五郎賞受賞”の他、”第137回直木賞候補”、”2007年本屋大賞第2位”という実績を獲得しています。山本周五郎賞といえば昨今、大衆文学作品に供与される賞としてはとても名高いもの。
ところで私、山本周五郎さんの作品は何作か読んだことがあるのですが、実写映画化もされた『雨あがる』をはじめとして、『竹柏記』や『めおと蝶』等、時代小説の中で強い夫婦愛を描いた作品が多い印象です。『竹柏記』の最後のほうで捲し立てていく展開は見ものです(いきなり余談です)!
ではではこちらの作品、大枠は、大学生の男女を中心に繰り広げられる群像劇。とても不可思議でもあり飛び抜けた様相を成していて、読んでいる間は「もう、これ何読まされてるんだろ笑」という感覚でした。終始を彩る怒涛の怪事件。それに翻弄されつくされました。。ニャー
物語は主人公の「先輩」とその後輩の「黒髪の乙女」のほぼ交互の視点切り替えを通して進行していきます。
先輩は同じサークルに所属する後輩、黒髪の乙女に一目惚れをしてしまいます。そこでこともあろうにも「ナカメ作戦(ナるべく カのじょの メにとまる 作戦)」なる暴挙に身を投じてしまうのです(本人は至って真面目てす)。とにかく偶然を装って何度も接近し、あわよくば黒髪の乙女に運命を感じさせようと奮闘に奮闘を重ねる姿、圧巻です!
実際にやられたら絶対にこわい気がします……けれどそこは黒髪の乙女! 凄みを感じさせる程の怒涛の天然っぷりで一人我が道をゆくのです。夜は短し、歩けよ乙女なのです。なむなむ!
「炊飯器よりお面白みに欠ける無粋者」を自称する黒髪の乙女は、奇想天外な人物との出会いや掛け合いを通じて、ときめきをあらわにしたり。疑問と達磨を抱きながら成長していく姿、、はあまり見られないのですが、←エッ でも彼女なりにぽてぽて歩いて行きますのでどうか温かく見守ってあげてください。
この小説の醍醐味といえば、やっぱり男女の交互の視点切り替えかなー。常に必死な先輩と、常に我が道をゆく黒髪の乙女のギャップが面白くて笑 波がすごい!
あとは、上でも書いた森見登美彦さんの独特の文体ですね。なかなかすんなりとは読ませてはくれないような、とてもゴツゴツとした独特な語彙や口調。フックな要素に極振りしたすごいものになっています。これは読まないうちには感じられません。ウンウン
そして自称天狗の樋口さんや悪徳高利貸の李白さん、古本市の神、学園祭事務局長等といった物語に嵐(竜巻?)を引き起こす登場人物達が、先輩と黒髪の乙女との間にどのように割って入り関わりをもっていくのかというのも見どころです。
私はこの小説を読んで、文学的にもすごく意味のある作品だなと感じました。ある意味型破りで、そして多くの人に愛されたというのもとてもうなずけるところでもあります。私が好きな綺麗で高尚なファンタジー作品では決してないけれど、この作品の持ち味はまた別の、そういうものとは対極に位置するような独自性にあるのだと感じました。
とても有名な作品てすが、新感覚がたくさんつまったとてもユーモラスな作品であることは確かなので、気になった方はぜひぜひ読んでみてくださいね⭐︎
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